お気の毒さま、今日から君は俺の妻

 なぜ死んだのかなんて責められても、春樹だって困るだろう。


(それにハルちゃんは私の心の中にいる……肉体はなくなってしまったけれど、私が思ってさえいればずっと、彼は私の世界に生きている……)


 この七年間、何度も自分に言い聞かせてきたこの思いで、澄花はどうにか生きてきた。そして同時に、春樹に救われた命を、簡単に投げ出せないと思うのもまた真実だった。

 澄花にとって春樹は全てだったから――。


(きっとハルちゃんは天国で呆れているだろうな……)


 彼が困ったように笑う姿が目に浮かぶ。
 だが優しい彼は、夢枕に立っても澄花の行いを責めたりはしないだろう。常日頃から、暴走気味な澄花をたしなめることはあっても、怒ったところなど一度も見たことがなかった。
 春樹は怒りという感情と一番縁遠い場所にいる人だった。


(ハルちゃん……)


 また、じわっと涙が浮かんだ。

 いけない、今は仕事中だ。
 これ以上涙がこぼれないよう、澄花はグッと唇を嚙みしめるしかなかった。


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