お気の毒さま、今日から君は俺の妻

「庭もいいが、まず中に入ろう」
「あ、はいっ……」


 龍一郎に肩を抱かれて石畳のアプローチを数メートル歩いて玄関のドアを開けると、まっすぐに廊下が伸びており、左右にいくつもの扉があった。


「屋敷の中は基本土足だ。まず手前から厨房、配膳室、食堂、応接間、書斎があって、応接間と食堂はホールで繋がっている」
「へぇ……」


 龍一郎の説明をひとつひとつ聞きながら、澄花はあたりをきょろきょろと見回す。
 どの部屋も清潔で、調度品のセンスがいい。古い映画に出てくる富裕層の家、そのままだ。


「素敵です……本当に」


 澄花がそういうと、龍一郎は少し目を細めて満足げにうなずく。


「二階はそれぞれの私室と、夫婦の寝室、子供部屋、あと客室がふたつあって、正面に面した形でサンルームがある」
「二階に……?」


 澄花は玄関前の階段を首を伸ばして見上げた。


(サンルームがあると洗濯物がよく乾きそうだなぁ……それに子供部屋……って、龍一郎さんが昔使ってた部屋なのかな?)


 漠然とそんなことを思いながら、ふと考える。


(私、いつか彼との間に子供を持つんだろうか……全然想像がつかないけれど……)


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