お気の毒さま、今日から君は俺の妻

「はい?」


 振り返ると、階段の下にいる龍一郎と目が合った。

 いつもは二十センチ以上の差がある彼だが、階段の下にいるせいで、視線が近い。
 黒いコットンのシャツとデニム姿の龍一郎は、いつものスーツ姿と違ってラフでカジュアルだ。だが似合わないということはなく、まるで海外の広告モデルのように洗練されて美しかった。


「龍一郎さん?」


 自分をじっと見つめて動かない龍一郎の目を覗き込むと、

「きみは美しいな」

 と、龍一郎がささやいた。


「えっ……?」


 いったい急になにを言い出すのだろう。面と向かって美しい人に美しいと言われて、澄花の頬に熱が集まった。


(あんまり見ないでほしいんだけど……)


 困った澄花は視線を逸らそうとするが、龍一郎はそんな澄花を熱をはらんだような目で見据えながら、澄花の手の甲をなぞり、それからぎゅっと指をからませて、自分に注意をひく。

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