お気の毒さま、今日から君は俺の妻
「っ……」
龍一郎の言葉に、澄花は息を飲んだ。
これまでのように、その体を愛するのだという意味ではなく、心を、澄花自身を愛していると言われたような気がした。
「なぜ……?」
とっさに出た澄花の言葉を受けて、龍一郎は一瞬、考えるように言葉を選んでいる様子だったが、その後軽く首を横に振った。
「すまない」
「それって」
「もう少し時間が欲しい……頼む」
そして龍一郎は、片手でやすやすと澄花の両手をまとめて掴み、口元に引き寄せると手の甲にキスをした。
(時間……時間の問題ってことなの?)
澄花は龍一郎を知らなかったのに、彼は澄花を知っていたこと。そして丸山夫妻の工場のこと。愛さなくてもいいと口にすること――。
もしかしたらずっと話すつもりがないのかもしれないと思っていた。だとしても、無理に聞き出すことはしたくないと思っていた。だが、龍一郎は、時がくれば話してくれると言う。
だとしたら、これはかなりの進歩だ。
今はそれで十分なのではないだろうか。