お気の毒さま、今日から君は俺の妻

 他人からすれば矛盾している考えかもしれないが、春樹を失いたくないから、澄花は自分を売ったつもりでいた。他人にどう思われてもいいと思っていた。

 だがどうだろう。
 あれほど毎日春樹を思っていたはずなのに、龍一郎と出会って彼と結婚してから、なにかと彼の事ばかり考えている。

 春樹のために選んだ結婚だったはずなのに、気が付けば春樹のことをないがしろにしている。

 ということは、彼の存在を消しているのは、他でもない自分なのではないか。

 そのことに気が付いた時、ハンマーで頭を殴られたような気がした。


「――っ」


 澄花ののどがひゅっと細くなり、息が漏れる。
 ドキンドキン、と心臓が体の中で暴れまわっている。
 息の仕方を忘れ、凍り付く澄花の手から、持っていた写真立てが滑り落ちる。

 ゴトン、と音がして、澄花はハッと我に返り、写真立てを手に取った。


「ハルちゃん、ごめんね……」


(私はなんて、薄情なんだろう……)


 写真立ての枠を指でなでたあと、胸に抱きしめる。

 澄花の目に涙が浮かんだ。
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