お気の毒さま、今日から君は俺の妻
(私はハルちゃんに命を救われたも同然なのに……ずっと思っていると誓ったのに……本当に、そうできると思っていたのに……)
ふと、契約を持ちかけた時の龍一郎の顔が脳裏によぎる。
澄花を無理やり車に乗せた後、「君を言い値で買おう」と言ったあの顔。
最初からこうすると心に決めていたと言わんばかりの、ある種の信念に満ちたような不思議な表情。
それを思いだすと、ズキッと胸が痛む。
彼には彼のルールがあるように、澄花だって守らなければいけない、自分に課したルールがあるのだ。
澄花は唇をきつくかみしめた後、写真立てをそっと宝石箱の下の段にしまった。さすがにもう机の引き出しの奥に押し込めておくことはできなかった。
せめて母や祖母から譲り受けた、大事なものと一緒にしておきたかった。
(龍一郎さんが私に自分を愛さなくてもいいと言ったこと……どんなつもりかはわからないけれど、それは私にとって正しいことなのかもしれない……でも……でも……)
鏡の中の自分は今にも泣きそうな顔をしていた。
(だけど私に泣く権利なんてない)
目を逸らして澄花はヒールの美しいピンヒールのパンプスを履き、すっくと立ち上がった。