お気の毒さま、今日から君は俺の妻
「龍一郎さんっ……」
澄花は涙目になりながら立ち上がる。酔いもいっぺんに冷めてしまったが、足元はショックでふらついていた。
「いったいどうしたんだ。なにがあった」
龍一郎は慌てたように駆け寄ってきて澄花を抱きとめ、そして同じようにしゃがみこんでいた天宮を見て、怪訝そうに眉をひそめた。
「私の妻になにか」
その声はひんやりと冷たく、完全に天宮を敵視しているのが伝わってくる。
澄花は一瞬なぜ?と思ったが、澄花がなにかを答えるよりも先に、天宮がにっこりと笑って立ち上がった。
「彼女の探し物を手伝っていただけですよ」
「探し物?」
「ピアスなの。どこかで落としたみたいで……」
澄花はオロオロしながら、肩に置かれていた龍一郎の手を振り切って、周囲を見回す。
「さっきまで確かにあったの、でもここでおしゃべりしてる時に落としたことに気が付いて……」
「――おしゃべり?」
龍一郎の視線が天宮に向けられる。
「ええ」
そしてその視線を受けて、天宮がまたにこりと微笑む。
澄花は気が付かない。
龍一郎の機嫌が、どんどん悪くなっていることに。
彼のネイビーブルーの瞳が、嫉妬に燃えながら天宮にまっすぐに注がれていることに。