お気の毒さま、今日から君は俺の妻
「買えばいいって……」
思わず唇がわなないた。
それは澄花にとって、とても残酷な言葉だった。
母のピアスは買えるものではないのだから。
だが龍一郎はくだらないといわんばかりに、吐き捨てる。
「小さなパールのピアスなんか、たいした金額ではないだろう。きみにふさわしい、もっといいものを百でも二百でも買ってやる」
そして澄花の左手首をつかむやいなや、龍一郎は強引にこの場から引き離すように、歩き始めたのだ。
「あっ……!」
澄花はふらつきながらも、必死で龍一郎の手を離そうともがく。
このまま『Bastien』を出てしまったら、母のピアスとは二度と会えない気がした。そのことを想像するだけで、全身から血の気が引く。
「いやっ、離してくださいっ!」
だがいくら叫んでも、振りほどこうと力を込めても、龍一郎は澄花の抵抗などどうでもいいといわんばかりにまっすぐと歩を進め、立ち止まらない。
「いいから帰るんだ」
「龍一郎さんっ……」