お気の毒さま、今日から君は俺の妻
だが涙が止まらず、床がよく見えない。澄花は手の甲で子供のように涙をふいた。
「栫さん、ピアスは俺に任せて病院に行きなさい」
そこで声を掛けてきたのはやはり天宮だった。
「でもっ……!」
「お店の迷惑になる」
「っ……」
「君のような絶世の美女が泣きながら床をはいつくばっていては、他の客が困るでしょ。食事どころじゃないよ。聡明な君ならわかるだろう」
それは天宮らしい、少しユーモアを交えた提案だった。
だがその言葉に澄花の発火寸前の思考回路が一気に冷えていく。
(ああ……そうだ。私、子供みたいに騒いで……ここは三ツ星レストランなのに……誰かの特別で大切な時間を台無しにするところだった……)
澄花は泣きながら、こくりとうなずいた。
「はい……ごめんなさい……天宮さん」
「いいから」
天宮は優しく笑って、そのままひざまずいて呆然としている龍一郎を無視し、澄花の肩を抱いて廊下の端に置いてあるインテリアの椅子に座らせた。