お気の毒さま、今日から君は俺の妻
すると龍一郎は、困ったように笑ってうなずいた。
「ああ。だが俺は、あの両親の子供じゃないんだ」
「――え?」
一瞬なにを言われたかわからなくなった澄花は、息を飲む。
「あの両親って……葛城の」
「そうだ。祖父はほかに囲っていた女性の間に娘をもうけた。その娘が俺の母だ」
「そんな……」
そういえば以前、龍一郎は葛城の両親のことを『いい人』だと言っていたではないか。まるで他人行儀な呼び方に、あまりうまくいってないのかと不安になったことを思いだした。
「まぁ、母は愛人の娘だからと言って肩身の狭い思いをしたわけではない。祖父もひとり娘のことはとても可愛がっていて、ピアノが好きだからという理由で留学させるくらいに、生活には余裕があったらしい」
「じゃあ龍一郎さんのお父様は?」
「俺の父はどこの誰かもしれない。おそらく道ならぬ恋だったんだろう。留学から戻ってきてこっそり俺を産んだ」
龍一郎はまた、ため息を漏らす。