お気の毒さま、今日から君は俺の妻

「そんな……いいんですか?」


 愛して、愛しぬいた男に振り向いてもらえなくて……夫の死後も彼を求めているという、葛城琴乃という女性。そしてかつては理不尽な暴力にさらされた龍一郎がそのケアをしなければいけないという因縁に、澄花はただ胸が詰まってしまった。


「確かに祖母の目には相変わらず実の息子も孫も映っていない。だが彼女が車いすになったのは、俺を探して階段から落ちたからだ。だからもういいんだ。悲しませたくないし、苦しめたくない」
「あ……」


 あまりにも悲しすぎる事実に、澄花は言葉を失った。


「――ずっと自分の人生を他人事のように見てきた。どうでもいいと思っていたし、興味もなかった。他人が求める自分を演じられたらいいと思っていた。苛立つこともあったが変えようとは思わなかった。それが摩擦を生まない人生だと思っていた」


 龍一郎はぽつりとつぶやく。


「そんな俺が……七年前、君に会って……変わったんだ」
「え?」


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