お気の毒さま、今日から君は俺の妻

「鬼よ、鬼……人の十倍働いてて、バリバリのキャリアウーマンで、睡眠時間は三時間って言ってたわよ」
「三時間……」


 そういえば龍一郎もそんなことを言っていたはずだ。澄花と一緒に寝るようになってだいぶ改善されてきた気はするが、よく夜中に起きて仕事をしているのは、知っている。


(会ったのはたった一度。だけどお会いできてよかった……)


 ちなみに葬儀の事務的な作業を仕切ったのは何十年も琴乃に仕えていた古河で、葬式に呼ぶリストだの、形見分けの内訳だの、琴乃はそう遠くない未来、自分がこうなることはわかっていて、死後のことは、すべて手配済みだった。
 本当に、経営者としては立派過ぎるくらい立派な人だったのだろう。


「睡眠時間が短すぎるのはよくないわ。最低六時間は寝ないと」
「私もそう思います」


 澄花もしっかりとうなずいた。


「ところでこれからどうするの?」
「龍一郎さんと待ち合わせしてるんです」
「あら、デート? いいわね」


 由香子はうふふと頬を染めて、行ってらっしゃいと微笑んだ。

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