お気の毒さま、今日から君は俺の妻
「――」
すると龍一郎は一瞬、呆けたように目を見開いた後、どこか悲しそうに――澄花にはそう見えた――囁いたのだ。
「君が欲しい」
「――え?」
それは思ってもみない答えだった。
「わた、し?」
(君って、私のこと? 私が欲しいって、どういう意味?)
ポカンと口を開け、目を丸くする。
澄花は自分に誰かに望まれるような価値があるとは思っていなかった。
確かに思春期を迎えたあたりから、異性に告白されることは多々あったが、それは思春期のはしかのようなものだとわかっていた。彼らは断ってもすぐにほかの誰かを好きになるし、澄花のことは忘れてしまう。だから本気にしたことなど一度もない。
唯一の例外は春樹だが、彼が自分を愛してくれたのは、幼いころからそばにいて、なおかつ自分の熱烈アプローチに“ほだされて”くれたからだ。
(ハルちゃんは優しい人だったから私を受け入れてくれた……女として熱烈に愛してくれたわけではないけれど、大事にしてくれた)
澄花はそれでもよかった。