お気の毒さま、今日から君は俺の妻

 かなり大胆な動作だが、この見栄えのいい男が堂々とやるとなんでも様になる。された澄花のほうが激しく照れてしまい、顔が真っ赤になってしまった。


「妻……」


(そうだ……私、この人の奥さんになるんだよね……ああ、どうしよう……)


 澄花は春樹を喪ってから、自分の人生にそれほどの意味はないと思っていたし、ただ残りの人生が終わるのを、じっと膝を抱えて待っているだけだった。

 だが丸山夫妻の窮地に際して出会ったこの男――葛城龍一郎が、澄花の人生を大きく変えたのだ。

 彼は澄花にとって救いの主だった。
 澄花が約束を守って妻になれば、澄花の恩人の人生は救われるのだ。
 この一か月はなにもかもがいきなりで、まるで嵐の中に放り込まれたような一か月だったが、自分と龍一郎は契約し、納得の上でこうなっているのだから、これでいいはずだ。

 だが同時に、澄花はずっと思い悩み気にかけていた。


(葛城さんが、なにを考えているのか、私にはまったくわからない……)

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