お気の毒さま、今日から君は俺の妻
さらに重ねてベストを脱ぎ棄て、今度は首元に手をやり、ネクタイを左右に引くようにして緩める。ネクタイを取った後はカフスを外し、それから体にぴったりとあつらえたシャツのボタンをひとつ、ふたつと外していく。
まるで踊るように着ているものを脱ぎ去る龍一郎を、澄花はぼーっと、熱に浮かされるように見上げていた。
(きれい……)
いや、実際見とれていたのだ。
今から自分がどうなるかとか、そんなことは頭から吹っ飛んで、ただ龍一郎がなにかに追われるように、脱ぐ姿を眺めていた。
(なんてきれいなの……)
彼自身は上品で美しいのに、まるで野生の獣のような優雅さと荒々しさが同居している。
そんな強くて美しいものに、征服されたくなるような――大きな波に飲まれて、問答無用に流されてしまいたくなるような――澄花は自分にそんな感情が眠っていたことなど気づきもしなかったが――葛城龍一郎にはそんな魅力があるようだった。
「澄花……」
上半身裸になった龍一郎は、ようやくそこで息がつけるといわんばかりに、深く息を吐き名前を呼んだ。