この恋が実るなら
「それと、伝えたいことはそれだけじゃないんだ。」
そう言って、ひとまず指輪のケースをテーブルに置くと、いつか見かけた雑誌の1ページを開いて私の目の前に差し出した。
「このオーダーメイド家具メーカーの、日本への唯一の流通ルートがうちの会社に決まったんだ。
5月には、あっちの支店に駐在として行くことが決まった。
こんな大事なこと、今まで黙っててごめん。」
何を言われてるのか、すぐに理解できずに目をパチパチさせて雑誌のページを注視した。
「これって、どこの国…?」
「フランスだよ。あちらへ移住とまではいかないけど、春に向こうに行ったら最低2年は住むことになりそうなんだ。」
私の動揺を見て、蒼一郎さんは慎重に言葉を進めた。
「だから、この件も含めて、結婚の話、真剣に考えてもらいたい。
僕は、この先ずっと一緒にいるのは寧々しかいないって決めてるから、
あとは寧々の返事を待つよ。」