お見合い愛執婚~俺様御曹司に甘くとらわれました~
智哉はさっきまで私が丸まっていたリビングのソファに遠慮もなく腰を下ろす。
「お茶。あったかいやつ。お前の分もな」
偉そうに言われて、反抗する気もなく指示されたとおり二人分茶葉を急須に入れてポットからお湯を注ぐ。
自分の湯呑とお客用のマグカップに緑茶を注いだ。
トレイに乗せて持っていくと、智哉が手荷物の紙袋から菓子折りらしい箱を取り出した。
「土産、せっかくだし食おうぜ」
包装紙をびりびりと破って現れた『安部川餅』の文字。
箱を開けて、二つ取って、一つを私に差し出す。
お茶を並べ終えた私はそれを受け取った。
智哉はビニールを破って中身のきな粉を零さないように柔らかな餅を口に運んだ。
「やっぱうまいな。久しぶりに食ったけど」
「……うん」
倣うように私も一口頬張って咀嚼する。
甘い餡子ととろける餅の触感。
きなこの懐かしい味に緑茶を含むと強張っていた身体がほっと緩んだのが自分でもわかった。
「甘いもの普段はそこまで食べないんだけど、疲れた時とか無性に食べたくなるんだよな。俺は餡子が特にそうなんだけど。ストレス堪ると禁断症状みたいに食べたくなって、夜中のコンビニにジャージのままアンパンとかどら焼き買いに行く」
「……うん」
私はただ智哉の他愛無い話に頷いていた。どこのコンビニのアンパンがおいしいとか。
さっきとは打って変わって智哉は全然核心をついてこない。
私の心の準備が整うのを待ってくれている。
それくらいは何となくでも感じ取れて、私は湯呑を両手で包み直す。