お見合い愛執婚~俺様御曹司に甘くとらわれました~



「お前やったことある?」

「ないけど」

「じゃあ、まずは一番遅い速度でやってみな」




そう言って私の手を引いて一番端に連れていく。私にバッドを握らせると智哉が背を押してきた。



「え、む、無理」

「無理じゃねぇ。やる前から努力を放棄するな」



いきなり連れてこられたから普通なら反故にしていいのに、このセリフは不思議と私の反骨精神を刺激してくる。


負けず嫌いな性格が仇になっているのはわかるけど、ここで引き下がるのは折れかけていたプライドが許さない。



テレビで見たプロ野球選手の姿を真似て構えてみる。


思ったよりバッドが重くて後ろに傾きかけた身体にぐっと力を込めて踏ん張る。



一球目。


スクリーンの投手からの一投は見事私のバッドを笑うようにすり抜けていった。


その後も、私はフルスイングで見事三振の連続。




「ちょっと、全然当たらないじゃない!」

「そりゃお前がへたくそだからだ」




十球全て終わって私が憤然と言うと、智哉が冷静に返してくるからぐっと唇を噛む。



だって、初めてなんだから仕方ないでしょ!



という言い訳をこの男にするのがどうしても屈辱だ。




「大体、振るのが遅い。お前の腕力じゃ球が出てから振っても間に合わない」

「わかってるわよ!」




後ろからやいやいと指摘されるとカチンとくる。



わかっているのに、できないこのもどかしさ。




< 51 / 105 >

この作品をシェア

pagetop