お見合い愛執婚~俺様御曹司に甘くとらわれました~
「えっと、谷さん、ですよね?」
「は、はい」
智哉は大人しくなった達彦に再度視線を向ける。
頷く達彦に智哉はより一層笑みを深めたかと思ったら、次の瞬間すっとそれを収めた。
その表情の冷たさに私が身震いしてしまった。
「お前が付き合ってた女は、慈悲深くて他人を傷つけるくらいなら自分が我慢するような優しい女なんだよ。仮にも付き合ってたんだから、それくらいわかるよな?」
「は、はい」
達彦は、完璧智哉に気圧されて怯えが声にも混じる。智哉はそれに構うことなくさらに言葉を続けた。
「あと、こいつが会社で肩身の狭い思いしないといけなくなった原因が誰なのかもわかってるよな?」
達彦は答えなかった。
その顔全体に苦みを感じたような表情から答えはわかっているはずなのに。
智哉は隣の達彦にぐっと顔を近づけた。
「おい、誰のせいだ?」
「お、俺です」
凄まれてようやく認めた。
智哉はまたいつもの美しい笑顔に瞬時に戻った。
「よかった。そこまでバカでもなかったみたいで」
ただし、毒舌は戻っていなくて、痛烈な言葉を達彦に浴びせると席を立った。
「すみません、お食事中だったのに。僕たちもう店出るので、どうぞご歓談続けてください」
「それでは失礼します」とロールカーテンを手から離す。
あっという間に視界から達彦たちが消えて、数分前の光景に戻った。