お見合い愛執婚~俺様御曹司に甘くとらわれました~
「行くよ。桜子」
外用の営業スマイルのまま私に言うとそそくさと席を出ていく。
私は慌てて荷物を持つと後を追った。途中で水を運んできたさきほどの店員と出会った。
「すみません、急用が入ってしまって。また来ます。あ、これ隣のテーブルの会計に。知人なので」
「え?あ、お、お客様」
智哉が財布から二万円ほどをトレイに乗せていくから、彼女もパニックになって慌てる。
智哉は振り返ることなく店から出ていく。
私は店員に「すみません」と一礼して店から飛び出た。
急いで追いかけようと左右を見回したら、智哉は店の塀のすぐ前で座っていたから驚いて飛び跳ねてしまった。
「あーあ、くだらねぇ奴に会っちまったな」
膝に肘をついて頬杖をする。
怒っているわけではないのはわかるが、やはり元カレのあんな姿を見た後では少し気まずい。
「ご、ごめん」
「なんでお前が謝るんだよ。まぁ元カレが使ってる店はいただけないけどな」
うっ。
確かにデートで使った店ではあるけど、まさかあいつも来ているとは思わなかった。
どう言い訳しようかと悩んでいるうちに智哉が「よっこらしょっ」と言いながら立ち上がった。
「俺、食いたいもんあるんだけど」
と告げてきた智哉の行き先に私は目を丸くした。