恋は盲目、愛は永遠
ご家族の方々が私たちの結婚に反対していたのではなく、鈴太郎さんが庶民の私をご家族に引き合わせたくなかったのでもない。
伊集院家の方たちは、そういう差別的な見方を全然していない。
だから私は大歓迎された。

でもやっぱり今だから、こうして受け止めることができていると思う。
これがハネムーンに行く前だったら、私は逃げ出していただろう。

ホッとひと息ついた私を見て、鈴太郎さんはニコッと微笑んだ。

「飲み物を取ってこよう。唯子も一緒に行くか?」
「あ、できたらここにいてもいいですか」
「うん、そのほうがいいだろう。ここにいろ。すぐに戻る」
「はい」

鈴太郎さんの背中が見えなくなるまで見送った私は、すぐ近くにある大きな松の木まで行った。

うわぁ。大きい。立派な木。
何歳なんだろう。年輪がいっぱい・・・。

そのとき「ここにいたんだ。唯子ちゃん」という男の人の声が聞こえた私は、そっちへふり向いた。

あ。若い男の人。
と思ったら、その人がツカツカ歩いて私のすぐそばまで来た。
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