恋は盲目、愛は永遠
「福島は、殺人的スケジュールに陥ると口が悪くなるという欠点はあるが、人は皆欠点を持っているものだ。寛大な心で許してやってくれ」
「あ・・・はぃ・・・」

これは私に言ってるんだよね?鈴太郎さんの顔、まだ近いし。

「では私は、10分ほどミーティングをさせてもらう。失礼」と鈴太郎さんは言うと、やっと顔を遠ざけて、ちゃんと隣に座ってくれた。

おもむろにパソコンを開き、イヤホンをつけて、画面の向こうの人と会話をし始めた鈴太郎さんを、私はぼんやりと眺めていた。

この視界も、今ここにいることも、すべてが現実とは思えない。
私は窓からボーっと外を眺めていた。
でも景色はぼんやりとしか見えない。見ているようで見えてない。

そのとき隣にいる鈴太郎さんが、私の手をそっと握ってきた。
ビクッとした私を安心させるように、鈴太郎さんは私の手の甲をそっとなでた。

「私がここにいる」

その低い声に、私はなぜか安心できた。
そしてまた、吸い込まれるように鈴太郎さんを見た私に、「そうだ。私だけを見ていろ。失礼」と言うと、またミーティングの続きとおぼしき会話を始めた。
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