恋は盲目、愛は永遠
動き出した私たちの運命
こんな黒塗りの高級車が、庶民の一宅前に止まっている図は、かなり場違いだった。
きっとこれから数日は、近所の話題になるに違いない。

「鈴太郎(りんたろう)さん、福島さん、そして倉田さん。大変お世話になりました」と今度は運転手さんにもお礼を述べた私は、豪華な車内の空間でペコリを頭を下げると、自分でシートベルトを外した。

「それじゃ・・・さようなら」

もうこの人たちと会うことはもちろん、かかわることすら二度とないはず。
だから私はお別れのご挨拶に少し躊躇した挙句、「さようなら」と言った。

なのに鈴太郎さんから、「おやすみ、唯子」と言われた私は、頭の中に?マークがたくさん浮かんでしまった。

大人が言うことはよく分からない。
結局それで片づけた私は、高級車から降りて、一般的な一軒家の自宅へと入っていった。

このときすでに、私の運命が大きく動き出していたことに、私は気づくはずもなかった。
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