恋は盲目、愛は永遠
逃げられない、逃げない
出たのはいいけど、これからどうしよう・・・。
私はお金を持ってない。
この地に来たのは初めてだし。
とにかく、鈴太郎(りんたろう)さんに見つかる前に、ここから離れなきゃ。

私はあてもなく歩き始めた。


「あれ・・・唯ちゃん?」
「・・・向坂(さきさか)さん」
「驚いた!まさかこんなところで再会するなんて!」
「本当ですね。私もビックリしました」

テクテク歩いてモールの駐車場あたりまで来たとき、職場の先輩だった向坂さんにバッタリ出くわした。
そのとき、「この人がそうなのか?」と、向坂さんの隣にいる男性が向坂さんに聞いた。

手をつないでいるところから察するに、向坂さんの彼氏なのかな。
で、私の何がそうなんだろう。

「あ、うん。彼女があの伊集院鈴太郎氏と結婚した唯ちゃん」

バツの悪そうな顔をしながら、そう言ってる向坂さんは、間接的に自慢しているように感じた。


< 91 / 298 >

この作品をシェア

pagetop