一途な社長の溺愛シンデレラ

 音楽の奔流に人々の熱気、ディスクを操作する天才音楽プロデューサー、車窓に目を向けていたその弟。

 思い浮かんだイメージにどきりとして、洗面台にプラスチックのカップを落とした。

 流れていく車窓の景色。深海を行きかう車のライト。デザート・ローズ制作会社の社長、結城遼介、結婚――。

 頭の中でバラバラと崩れてはまた形を結んでいく言葉を追いやるように、もう一度顔を洗った。

 水が跳ねて鏡を濡らす。

 結城遼介、結婚……。

 それでも頭を埋め尽くす社長の姿は、しばらくのあいだ、消えなかった。


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