一途な社長の溺愛シンデレラ

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 私は自分で記憶している限り、人前で泣いたことはない。

 それなのに、今は涙が止まらなかった。ぼろぼろと頬に筋をつくって、あごからしたたり落ちる。

「大丈夫か?」

 私にタオルをよこしながら、社長は明らかに笑いを堪えている。

「目が……痛い」

「玉ねぎは素早く切らないと目にくるんだよな。いったんレンジにかけるといいんだけど」

 仕事を終えてから、社長の家の広いキッチンで夕食を作るついでに料理を教えてもらっていた。

 パン粉を牛乳に浸しておいたボールに、指示されるまま具材を投入する。ひき肉と火を通した玉ねぎのみじん切りと卵、それから調味料。

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