一途な社長の溺愛シンデレラ

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 石原ビルの外に出たとたん、冷えた風が吹き抜けた。

 3月に入ったというのに、今日の空気は肌を刺すようだ。

 絵里奈に借りたトレンチコートの前を掻き合わせていると、となりを歩いていた社長が言った。

「おまえ、この駅トラウマだろ?」

 ちょうど地下鉄の階段に差し掛かったところで、ごく自然に腰に手を回される。

 あまりにも突然で心臓が跳ねた。コート越しでもわかる力強い手の感触に意識が集中する。

「初日だったから、さすがに忘れられないよ」

 そう言ってくすくす笑いながら、戸惑う私をエスコートするように彼は階段をゆっくり下りていく。

 どうやら私が通勤ラッシュにあてられて動けなくなった入社当日のことを思い出しているらしい。

 あの日、電車に乗っている時点で気分が悪くなっていた私は、ふたり並ぶのがやっとのこの狭い階段で人に押しつぶされ、途中でうずくまってしまった。

 駅員に連れていかれた救護室で休んでいた私を迎えにきてくれたのが社長だ。

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