一途な社長の溺愛シンデレラ

「お守り?」

 商店の明かりにぼんやり照らされた歩道を見渡す。すると、停めてある自転車の陰に白いお守りが落ちていた。

 拾い上げて差し出す。

「これのこと?」

「ああ、そうそうこれ。よかった」

 彼女は大事そうにそれを受け取ると、曲がった腰を精一杯のばして私にお辞儀をした。

「助かったよ。どうもありがとう、ボク」

 スローモーションのような動きで駅に向かっていく老婦人の背中を、じっと見送る。

「ぼく……」

 つぶやいてから、気を取り直して徒歩五分の家路を急いだ。

 5階建てマンションの3階、築20年のワンルームが私の城だ。

 ハイカットブーツを脱ぎ捨てモッズコートのフードを取る。

 廊下の全身鏡に、帰宅したばかりの自分の姿が映った。


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