一途な社長の溺愛シンデレラ

 だんご型にまとめていた髪をほどくと、クセのつきにくい針金みたいなストレートヘアが背中に垂れる。

 身長は150センチ。肉のついていない手足と薄い胸にくわえて、化粧をしていない顔。

 おまけにコートの下は洒落っ気のないパーカーに擦り切れたジーンズだ。

 なるほど、髪を引っ詰めてフードをかぶっていれば中学生くらいの男に見間違えられても仕方ないかもしれない。

 冷蔵庫から缶ビールを取り出して、パソコンの前に座った。

 六畳のフローリングは狭い。

 家具といえばディスプレイがふたつ並んだパソコン台と座椅子、ベッド、それから資料が詰まった本棚があるくらいなのに、どういうわけか足の踏み場もなかった。

 ビールを一口飲んで、私は『リンクト』にログインする。

 タイムラインに並ぶ情報にざっと目を通し、ふと思いついた言葉を打ち込んで投稿ボタンを押す。

《今日、少年に間違えられた》

『リンクト』はユーザーが自由に情報を発信できるウェブツールだ。

 画像や動画のアップが可能で、企業や個人が宣伝のために使用することもできるし、くだらない日常を垂れ流すこともできる。

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