一途な社長の溺愛シンデレラ

 でも仕事はちゃんとするし、社長からの信頼も厚いから、世の中は見た目ばかりがすべてではないのだな、と彼を見るたびに実感する。

「おい、聞いてんのかクソガキ」

 耳を引っ張られて顔ごと持っていかれる。

「痛い」

 静かに抗議すると、私から手を離し、御池さんは面倒そうに背もたれに仰け反った。

「たく、この嬢ちゃんには荷が重いんじゃねえか?西村にやらせればいいのに。ていうか西村は今日どこいったんだ?」

「まあそう言わず。沙良にもスキルアップが必要なんだよ。ちなみに西村は今日有休」

 社長が手にしていた地図をばさりとテーブルに広げた。一部がマーカーで塗られ、細かい書き込みもされている。

「スキルアップねえ。デザインの天才だかなんだか知らねえけど、恋のひとつもしたことないんじゃ、この仕事はきついんじゃねえの」

 御池さんは三十歳で、この会社で最年長だ。ときに父親のように厳しく、ときに兄のように優しく社長に意見する彼は、社長とは古くからの知り合いらしい。

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