今宵、エリート将校とかりそめの契りを
「嫌っ! 総士さ……」


信じられないほど乱暴な総士の行動に怯え、琴は身を捩って悲鳴をあげた。
しかし、怒りに猛る総士の心は、彼女の涙交じりの声にも逆撫でされる。


「俺に抱かれるのが嫌か。ならば今からでも遊郭に売り飛ばすか?」

「っ」


無残に裂かれた夜着から晒された白い胸元に、総士の視線を感じながら、琴は彼の言葉に小さく息をのんだ。
その反応を総士は見逃さず、フッと冷笑を浮かべる。


「もともとお前が一番恐れていたのはそれだ。処女を失った今でも、それは変わらないのか?」

「そ、総士さ……」

「一度は俺の妻になった女だ。下手な素人よりは箔がついて、羽振りのいい客もつくぞ。まあ、俺もかなりの笑い者になるだろうがな」


総士の薄い唇が紡ぎ出すとんでもない言葉に、琴は耳を疑った。
あまりの衝撃に言葉も出ず、琴は『嫌、嫌』と言うように必死に首を横に振った。


それを見て、総士は冷たい笑みを引っ込める。
そして、涙を零す琴の目から逃げるように、顔を背けた。


「俺が……どんな気持ちで……」

「え……?」


頭上から降ってくる小さく掠れた声に、琴は身を竦ませながら訊ね返した。
しかし総士はそれに応えず、彼女から顔を隠したまま身体を起こす。
ベッドに突いた手の下でスプリングを軋ませ、総士はゆっくり床に足を着いた。
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