今宵、エリート将校とかりそめの契りを
本に見守られるように執務室を横切ると、総士は窓を背にしたオーク素材の重厚な机に回った。
ゆったりとした革張りの黒い椅子を引き、脱力するようにドスッと腰を下ろす。
その様子を見ながら、後から続いた忠臣が総士の机の前に直立した。
「パレードは途中で切り上げたはずが……ずいぶんとお疲れのご様子ですね」
まだ軍服姿の総士の前で、仕立ての良い黒いスーツを寸分の隙もなく着こなした忠臣が、黒縁眼鏡の向こうの目をフッと細める。
彼は総士の従兄弟に当たる。
総士の乳母の長男……いやゆる乳兄弟だ。
年齢は総士より二歳年上の二十五歳だが、主人と側近という関係。
その為、忠臣は総士に丁寧な物言いをするが、二人は幼い頃から遊びや勉強の相手となり、一緒に育った仲だ。
総士にとっては、数少ない気心知れた人間の一人。
心を許せる唯一の人間と言ってもいい。
実際……。
「まあ、昼間から公衆の面前で捕り物騒動ともなれば、いくら総士様でもお疲れになりますか。しかも相手が苦手な女であれば、尚更」
忠臣の口調はどこまでも慇懃だが、その内容といえば遠慮のないズケズケとした物だ。
パレード中はニコリともしなかった総士が、彼の物言いにはわかりやすくムッとした表情を浮かべる。
ゆったりとした革張りの黒い椅子を引き、脱力するようにドスッと腰を下ろす。
その様子を見ながら、後から続いた忠臣が総士の机の前に直立した。
「パレードは途中で切り上げたはずが……ずいぶんとお疲れのご様子ですね」
まだ軍服姿の総士の前で、仕立ての良い黒いスーツを寸分の隙もなく着こなした忠臣が、黒縁眼鏡の向こうの目をフッと細める。
彼は総士の従兄弟に当たる。
総士の乳母の長男……いやゆる乳兄弟だ。
年齢は総士より二歳年上の二十五歳だが、主人と側近という関係。
その為、忠臣は総士に丁寧な物言いをするが、二人は幼い頃から遊びや勉強の相手となり、一緒に育った仲だ。
総士にとっては、数少ない気心知れた人間の一人。
心を許せる唯一の人間と言ってもいい。
実際……。
「まあ、昼間から公衆の面前で捕り物騒動ともなれば、いくら総士様でもお疲れになりますか。しかも相手が苦手な女であれば、尚更」
忠臣の口調はどこまでも慇懃だが、その内容といえば遠慮のないズケズケとした物だ。
パレード中はニコリともしなかった総士が、彼の物言いにはわかりやすくムッとした表情を浮かべる。