今宵、エリート将校とかりそめの契りを
「忠臣。何度言ったらわかる? 俺は女が苦手なわけじゃなく、面倒くさいだけだ」


総士に眼光鋭く睨まれても、忠臣は動じる様子もなく、わずかに口角を上げるだけ。


「どこまで傷めつけて大丈夫か、加減がわからないからでしょう? そんなもの個人差ですから、泣く寸前までやり込めて、八分目で止めればいいのです」


物静かで紳士的なその見た目に反し、腹黒さを憚らない忠臣に、総士は目を伏せ大きな溜め息をついた。
首元まで支えになるシートに大きく背を預けると、喉を仰け反らせて天井を仰ぐ。


「お前が言うとなにやら語弊を感じるな。俺は、戦地で相対する敵兵のことを言っている。万が一敵国に女兵士がいたら、どこまで本気で戦っていいか加減がわからず厄介。だから面倒だ、と言いたいんだが?」


顔を天井に向けたまま、目線だけ落として忠臣に説明をする。
そんな総士を、忠臣はクスクスと笑う。


「女を徴兵している国など、聞いたこともない。真剣に考えることではないでしょう」


財閥の中枢の一角を成す、大会社の社長である総士の父が一目置く頭脳を持つ男、それがこの忠臣だ。
聡明な忠臣に口で反論しても、いつもこの調子で煙に巻かれる。
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