今宵、エリート将校とかりそめの契りを
「そうですよ。もしや……総士様は、奥方様の情夫とでも深読みされましたか」

「っ……」

「なるほど。ならばあの苛立ちを隠せていない珍しい様子も、解せるというもの」


忠臣は琴の短い言葉と表情、仕草だけで、昨夜の総士の様子を簡単に暴いていく。


「夫であれば、妻の情夫など、許せず当然……か」


顎に手を遣り、『ふむ』と思案する忠臣に、琴は慌てて口を開いた。


「小暮さん、それは総士さんの誤解なの。逢引とか不貞とか……そうじゃない」

「ほう。総士様はそんなにはっきり仰せられましたか」

「あんなに怒った総士さん、初めて見た。なにを言っても聞いてくれなくて。私、どうしたら……」


なぜ忠臣にこんな泣き言を言っているのだろう。
自分でもそう思いながらも、琴は途方に暮れて声を消え入らせた。


泣きそうに顔を歪め、唇を噛んで俯く琴にチラリと横目を向けて、忠臣は小さな溜め息を漏らす。


「奥方様。総士様の寝首は掻けそうですか?」

「っ、え?」


突然向けられたその質問に、琴は一瞬面食らって目を丸くした。


今の会話の流れで、なぜそう訊ねられたのか、忠臣の意図が読めない。
琴が困惑する様子を存分に観察して、忠臣はスッと背筋を伸ばした。
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