今宵、エリート将校とかりそめの契りを
「総士様。そのお怪我ですし、本日は……」
「わかってる。だが、昨夜の件は軍部にも報告せねばならないだろう」
「賊に斬られた……と報告なさるのですか?」
総士から軍服を受け取りながら、忠臣が探るように問いかける。
それを耳にして、総士は無意識に親指の爪を噛み、言いあぐねた。
忠臣は総士の浴衣の肩を抜きながら、上目遣いで彼の様子を観察している。
探られる感覚をやり過ごし、総士は目を伏せ溜め息をついた。
「お前……まだ琴に疑心を抱いているか?」
ポツリと呟き訊ねると、忠臣が笑みを引っ込め、眉をひそめた。
「総士様の無事を考えれば、見張りをつけて野放しにした方がよい。なにもこの屋敷に置かずとも、と。総士様。……昨夜の男は」
「言うな。俺も思いつかぬほど愚かではない」
声を潜めて進言しようとした忠臣を、総士はそう遮った。
命令を聞いて、忠臣も口を噤む。
浴衣を脱ぎ、シャツに袖を通しながら、総士は思考を巡らせていた。
陸軍士官学校出の将校と言えば、軍部でもトップクラスのエリートだが、その分やっかみや世間の風当たりも強いのが実情だ。
自慢にもならないが、昨夜のように闇夜に紛れて襲撃されたのは初めてではない。
「わかってる。だが、昨夜の件は軍部にも報告せねばならないだろう」
「賊に斬られた……と報告なさるのですか?」
総士から軍服を受け取りながら、忠臣が探るように問いかける。
それを耳にして、総士は無意識に親指の爪を噛み、言いあぐねた。
忠臣は総士の浴衣の肩を抜きながら、上目遣いで彼の様子を観察している。
探られる感覚をやり過ごし、総士は目を伏せ溜め息をついた。
「お前……まだ琴に疑心を抱いているか?」
ポツリと呟き訊ねると、忠臣が笑みを引っ込め、眉をひそめた。
「総士様の無事を考えれば、見張りをつけて野放しにした方がよい。なにもこの屋敷に置かずとも、と。総士様。……昨夜の男は」
「言うな。俺も思いつかぬほど愚かではない」
声を潜めて進言しようとした忠臣を、総士はそう遮った。
命令を聞いて、忠臣も口を噤む。
浴衣を脱ぎ、シャツに袖を通しながら、総士は思考を巡らせていた。
陸軍士官学校出の将校と言えば、軍部でもトップクラスのエリートだが、その分やっかみや世間の風当たりも強いのが実情だ。
自慢にもならないが、昨夜のように闇夜に紛れて襲撃されたのは初めてではない。