今宵、エリート将校とかりそめの契りを
しかしこのタイミングでの襲撃だ。
総士にもわかる。


「昨夜の男は、十中八九、琴と繋がりのある男……おそらく、琴に偽の情報を与えた人間だ」


着替えを終えた総士は、忠臣に礼を言うと机に向かって歩いていった。
それを聞いた忠臣は、厳しく険しい表情を浮かべる。
彼の表情の変化を見て、総士は窓を背にした椅子にドカッと腰を下ろした。


「忠臣、お前もそう思ったから、昨夜あれだけ反対したんだろう?」


机に両肘を乗せ、顔の前で指を絡ませ、総士は忠臣を上目遣いに探る。
忠臣は迷う様子もなく、「はい」と即座に答えた。


「ですから、総士様。まだ奥方様に気を許すのは……」


忠臣が諌めるのを聞きながら、総士は指を解き、腹の引き出しを開けた。
そこから、しっかりと柄に収められた短刀を取り出す。


「っ、それは」


総士の手の短刀を見て、忠臣はギョッとしたように目を剥いた。
総士は目の高さに掲げてから、「ああ」と頷いてみせる。


「パレードの時、琴が俺に向けた短刀だ」

「この部屋には、奥方様を出入りさせているというのに。なんて無防備なことを……」


忠臣は眉間で眼鏡をクッと持ち上げ、呆れた口調で言い捨てる。
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