今宵、エリート将校とかりそめの契りを
「早乙女軍曹の戦死の知らせを受け、家族は心中したと伝え聞いた。妹が生き残っていたとは知らなかった」


その悲惨な死に目を想像して、総士は眉間に皺を刻み、グッと目を閉じた。


軍人となり、これまで何度も戦地に赴いた。
国家の為という大義名分の下、敵と会えば武器を振るい死闘を繰り広げた。
軍人にとって、戦死は大いなる名誉。
自分の死も恐れず、相手の首を取り武勲を挙げた。


人間の死にはもはや冷酷になっている総士でも、戦地を離れて聞く死には心を痛める。
目頭を指で押さえる総士をジッと見つめた後、忠臣は一度間を置いて口を開いた。


「妹が女学校に行っている間に、両親だけで首を括ったそうです」

「あの娘が発見したのか。……それは逆恨みでも俺を殺したくなるだろうな」



女に同情を見せる総士は珍しい。
忠臣は眼鏡の奥の目を探るように細め、わずかに首を傾げた。


「それで武道の才もない素人の女に簡単に殺められるようでは、陸軍中尉の面目丸潰れです」

「当たり前だ。忠臣、早乙女軍曹の戦死について、情報を集めてくれ。しかし……そういう経緯だったか。刀の構えもまるでなっていない女が、あれじゃあ捕らえられる為に飛び出したようなものだと思っていた」
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