今宵、エリート将校とかりそめの契りを
ドアノブにかけていた手を離し、思わず口を覆い隠す。
部屋に背を向けて固まる総士を、忠臣はクッと肩を揺すって笑った。
「戻ったら、奥方様に謝っておいた方がよろしいですよ。『情夫だなどと誤解してすまなかった』と」
「……うるさい。そんなこと言われずともわかっている」
総士はバツの悪い思いで、不貞腐れたようにボソッと呟いた。
身体の奥底から湧き上がってくるような怒りを、琴に晒し、ぶつけてしまったのは、まだつい一昨日の夜のことだ。
宴席帰りで、酒を口にした後ではあったが、彼女に言ったように酔っていたわけではない。
ただ、帰ってきてすぐ、琴が男と会っていたと聞いて、なぜだか心がざわめいた。
説明のつかないざわざわした不快な感情は、一晩寝て押し殺してしまおうと思ったのに、叶わなかった。
「なぜ、琴の恋仲の男だなどと、俺は……」
口に手を当てたままの呟きはくぐもり、総士自身の耳にも不明瞭に届いた。
しかし、忠臣には聞こえたのか、それとも総士の心を見抜いただけか。
「仮初めの約束でも、妻は妻。一度契った女は独占したくなるのも男の性ゆえ。総士様は夫なのですから、妬心を見せるのも無理はない」
「っ……!」
自分でもはっきりと描き切れなかったあの時の心の揺れを、忠臣に真っ向から言い当てられ、総士はグッと言葉に詰まった。
部屋に背を向けて固まる総士を、忠臣はクッと肩を揺すって笑った。
「戻ったら、奥方様に謝っておいた方がよろしいですよ。『情夫だなどと誤解してすまなかった』と」
「……うるさい。そんなこと言われずともわかっている」
総士はバツの悪い思いで、不貞腐れたようにボソッと呟いた。
身体の奥底から湧き上がってくるような怒りを、琴に晒し、ぶつけてしまったのは、まだつい一昨日の夜のことだ。
宴席帰りで、酒を口にした後ではあったが、彼女に言ったように酔っていたわけではない。
ただ、帰ってきてすぐ、琴が男と会っていたと聞いて、なぜだか心がざわめいた。
説明のつかないざわざわした不快な感情は、一晩寝て押し殺してしまおうと思ったのに、叶わなかった。
「なぜ、琴の恋仲の男だなどと、俺は……」
口に手を当てたままの呟きはくぐもり、総士自身の耳にも不明瞭に届いた。
しかし、忠臣には聞こえたのか、それとも総士の心を見抜いただけか。
「仮初めの約束でも、妻は妻。一度契った女は独占したくなるのも男の性ゆえ。総士様は夫なのですから、妬心を見せるのも無理はない」
「っ……!」
自分でもはっきりと描き切れなかったあの時の心の揺れを、忠臣に真っ向から言い当てられ、総士はグッと言葉に詰まった。