今宵、エリート将校とかりそめの契りを
冷静に話をしているうちに引いた熱が再び上ってきて、総士の頬をカッと赤く染める。


(嫉妬……俺が、琴に?)


半信半疑で自分に問いかけた途端、総士の鼓動はドキドキと大きな音を立てて打ち始めた。
焦りが滲み出ている総士の背中を見つめ、忠臣はククッと小さな含み笑いを漏らす。


「で……総士様」


妙にゆっくり、ねっとりと呼びかける忠臣を、総士は警戒しながら肩越しに視線を向ける。


「寝室で、奥方様になにしてきたんですか?」

「っ!!」


躊躇いも見せずにど真ん中を突かれた質問に、総士は反射的に唾をのみ、それを喉に詰まらせた。


「ぐっ、ごほっ……」


激しく噎せ返ってしまい、ニヤニヤと笑う忠臣を誤魔化すこともできない。


「本日は早くお戻りください。傷が痛まないようであれば、奥方様を外に連れ出して差し上げては?」

「え?」


ようやく噎せが治まり、総士は生理的な涙を浮かべながら、訊ね返した。


「奥方様はパレード以来ずっとこの屋敷におられます。呉服商を自分で訪ねたいと仰ったのも、外に出たかっただけなのでは?」


腕組みをして、探るように提案する忠臣に。


「……早く戻ると、伝えておいてくれ」


総士は大きく深呼吸しながら、言い置いた。

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