今宵、エリート将校とかりそめの契りを
正一に疑惑を抱きながらも、そうじゃなければいいと願っていた琴が、垣間見る形で知ってしまった現実。
琴の想像が正しければ、これは酷い裏切りだ。
(正一さんに問い質さなきゃ。もし私の勘が合ってるなら、昨夜のような真似は二度としないでって伝えなきゃ。軍部への告発も……思い留まらせなきゃ)
琴はキュッと唇を噛み、緊張を鎮めようと大きく深呼吸した。
軒先の主人が店に引っ込んだ隙を見て、電信柱の陰から抜け出る。
正一の後を追って蔵に向かうと、石造りの蔵の古びた重そうな木の扉が大きく開け放たれていた。
琴はその奥に正一の背を見つけた。
彼は従順に掃除をしているらしい。
ザッザッと竹箒で床を履く音が、外にも聞こえてくる。
その音で、琴の足音は掻き消されたようだ。
戸口に立っても、正一は背を向けたままで琴に気付く様子もない。
「正一さん」
箒に負けぬよう声を張って呼びかけて初めて、彼はビクッと肩を震わせて振り返った。
戸口に立つ琴は逆光を浴びていて、一瞬、正一は姿を確認できなかったようだ。
眩しそうに目を細める。
次の瞬間になってやっと、彼の口が「琴!」と動いた。
持っていた箒をほとんど投げるように壁に預け、戸口まで駆け寄ってくる。
琴の想像が正しければ、これは酷い裏切りだ。
(正一さんに問い質さなきゃ。もし私の勘が合ってるなら、昨夜のような真似は二度としないでって伝えなきゃ。軍部への告発も……思い留まらせなきゃ)
琴はキュッと唇を噛み、緊張を鎮めようと大きく深呼吸した。
軒先の主人が店に引っ込んだ隙を見て、電信柱の陰から抜け出る。
正一の後を追って蔵に向かうと、石造りの蔵の古びた重そうな木の扉が大きく開け放たれていた。
琴はその奥に正一の背を見つけた。
彼は従順に掃除をしているらしい。
ザッザッと竹箒で床を履く音が、外にも聞こえてくる。
その音で、琴の足音は掻き消されたようだ。
戸口に立っても、正一は背を向けたままで琴に気付く様子もない。
「正一さん」
箒に負けぬよう声を張って呼びかけて初めて、彼はビクッと肩を震わせて振り返った。
戸口に立つ琴は逆光を浴びていて、一瞬、正一は姿を確認できなかったようだ。
眩しそうに目を細める。
次の瞬間になってやっと、彼の口が「琴!」と動いた。
持っていた箒をほとんど投げるように壁に預け、戸口まで駆け寄ってくる。