今宵、エリート将校とかりそめの契りを
しかし――。


程なくして注文した物が運ばれてくると、琴は目をキラキラさせて感激した。


「ほ、本当に、いただいてもいいんですか!?」


総士から見たら、なんの変哲もないただのバニラアイスだ。
丸くくりぬかれた生成り色のアイスが、ガラスの器にのっている。
申し訳程度に、木の実や果物の砂糖漬けが添えられているだけ。


しかし琴は既にスプーンを手にして、今にもアイスクリームに挿し込みそうな勢いだ。
臨戦態勢万全だというのに、今さらのように許可を得る彼女に、総士は思わずプッと吹き出してしまった。


「もちろんどうぞ。溶けないうちに」

「いただきますっ」


嬉しそうに声をあげて一口掬う琴を正面から眺め、自分は珈琲に息を吹きかけて冷ましながら、総士は相好を崩していた。


(まだすべて片付いたわけじゃないのに、『デート』とは……随分と和やかなことをしているな。俺は)


苦いが香り高い珈琲を飲みながら、美味しそうにアイスクリームを食べる琴から目が離せない。
胸に温かい感情が広がっていく。


(いや……だから今、この時間が必要か。屋敷に戻ったら、忠臣からの報告を聞かなきゃいけない。琴にとって、辛い報告にならなければいいが……)
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