今宵、エリート将校とかりそめの契りを
「さあ、女! 栄えある凱旋パレードの最中、陸軍中尉殿に刃を向けるとは、大日本帝国に背いたも同然。反逆罪とみなす。もちろん、それ相応の覚悟はできているだろう」


総士の前に立った警官は、ここぞとばかりに威厳を振り翳し、琴を睨めつけて脅す。
琴は両腕を掴み上げられていても、制服の警官二人を睨み返した。


「命を捨てる覚悟もなく、誰がこんなに大それたことをしでかすものですか」


彼女の反応は想定外だったのか、警官はグッと言葉に詰まった。
より一層目力を込める琴の前で、大の男二人が怯む様子を見て、総士は眉を寄せた。


「この女っ……来い!!」

「いや、待て」


虚勢を張って、自らを鼓舞しようと声を荒らげる警官を、総士が鋭い声で止めた。


「中尉殿?」


警官は訝しげに瞬き、総士を見上げる。


「刃を向けられたのは俺だ。よって処罰は俺自身が下す」


先ほどまでとまったく変わらない、感情の滲まない声。
言われた警官だけでなく、掴み上げられたままの琴も、不審げに眉をひそめた。


「で、ですが……」

「俺を狙った罪への罰だ。わざわざ国民の前で見せしめる必要はない。いいから手を離せ」


総士に命令を重ねられ、警官二人は戸惑ったように視線を交わし合った。
そして、なんとも不服そうに琴の腕を解放する。
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