きみに初恋メランコリー
「それじゃ、長谷川。この問題の答え言ってみろ」



まるっきり授業を聞いていない俺に気づいていたのか、そう言って担任でもある英語教師(34歳独身男)が黒板に書いてある問いを指した。

俺はスッと立ち上がって、キリリとしたイイ顔で答える。



「体言止めです」

「……うん、わかった。座っていいぞ」



もはや教科ですらかすっていない俺の答えに注意する気力さえ削がれたらしい先生が、今起こったことを見事スルーして授業を進めた。

周りからは、くすくすと笑い声が聞こえる。



「長谷川くんて、おもしろいよね」

「あはは、そりゃどーも」



隣の席の女子に、へらりと笑顔を向けて。

俺はまた、深いため息を吐いた。
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