きみに初恋メランコリー
「なあ、長谷川なんかあったわけ?」



昼休み。ごちゃっと適当に机をくっつけて、男ばかり7人でごはんを食べているときのこと。

焼きそばパンを頬ばっていた俺は、他の奴らに聞こえないようにするためか少しひそめられた乾のその言葉に、ごくんとのどを鳴らした。

俺は何でもないそぶりで、今度はブリックの牛乳に手を伸ばす。



「はあ? 今朝といい、なんだよ乾。別になんもねーよ」

「それかやっぱ昨日、月舘さんと……」

「だからー、昨日は結局海行けなかったっつったろ」

「……ふぅん」



うなずきつつも、その顔は明らかに釈然としていない表情だ。

今日は朝から乾は、こんな調子で。今朝顔を合わせるなり、「昨日の海はどうした?」と、やたら食いついてきたのだ。

そして俺の都合が悪くなって行かなかったと言えば、なぜか不満顔。

まったくコイツは、突然どうしたというのだ。


……まあ、乾は以前俺の家に来たときにまどかと会って、そのときの態度から、俺の気持ちに目敏く気がついて。

だからコイツは、俺の不毛な約10年に渡る片思いのことを知っている。

そのことがあるから、俺が女の子と出かける約束をしたということにも、何か思うところがあったのかもしれないけれど。
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