お見合い相手は無礼で性悪?




いつも気にかけていたの?
少し遅れて歩く私を時折振り返って見ていたのはサポートの為?

・・・この道のほうが近道なのに

そう思ったことは何度かあるけれど
それが側溝を避ける為の配慮だったと?

この期に及んで・・ではなくて?

失礼な態度しか思い返せないのに

少し痛む胸は時折見せるあいつの優しさに気付いていたからなの?

流れる景色を見ながら自問自答を繰り返す

もちろん行き着く答えは、何もなくて

酷く疲れた気分で家に戻ると
両親に婚約解消を願い出た

説得していた両親も
直接本人にも伝えたことを知ると

『愛華の人生だから』と最後は納得してくれた



小学校から大学までエスカレーター式の女子校に通った所為で

年配の先生以外とは男性と触れ合う機会もなかった

それに・・・

子供の頃から『お婿さんに来てもらう』と言われ続けたこともあって

合コンに誘われても
交際から結婚に発展出来ない想いが
ブレーキをかけさせていた。
 

・・・もう少し男の人に慣れなきゃ


少しの反省をこめて
これからの目標を立てたところで


迫り来る眠気に負けた




・・・




翌日、父からの呼び出しに

もしかしたら復職かも?なんて呑気に会社へと向かった


・・・この後、濱田トレーナーに挨拶をして帰ろう


完全に浮き足立った気分のまま
勢いに任せて社長室の扉を開くと


『おぉ、愛華、来たか』

満面の笑みで立ち上がった父の向こう側に


居るはずのないあいつが見えた



・・・っ


ドアノブに手をかけたまま
頭を巡るのは嫌な予感


バタンと扉を閉めると

長い廊下を駆け出し
エレベーターのボタンを押した


・・・早くきて


降りたところだから止まっていると思ったエレベーターのランプは一階下で点いている


急かすようにボタンを連打するうちに
漸く到着したエレベーターの扉が開くと素早く乗り込んだ


同じタイミングで扉の開く音が聞こえた


「・・・っ!」


慌てて一階のボタンを押すも
静音仕様の扉はゆっくりと動作を始めた


・・・早く閉まって


その願いも虚しく

閉まりかけた扉を
両手で阻止したあいつは


『逃げることはないだろ?』


ズカズカと私を追い込むように乗り込んで来ると
隅に逃げる私を囲い込むように立ち塞がった




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