ワンコ系Drの熱烈アプローチ


落ち着かない気持ちのまま席につかせてもらい、乾杯をすると、蓋を開けた鍋から盛大に湯気が立ち昇った。

鮎川先生が用意してくれた鍋は野菜がふんだんに入った鶏鍋。

白菜の緑がすごくきれいだ。


「実家から大量に送られてきちゃってさ、一人じゃ処理できなかったから助かったよ」


早速取り皿に熱々の具材を載せながら、鮎川先生はそんな事情を口にする。


「ご実家から、ですか」

「そうそう、何か農家やってる患者さんから大量にもらったとかで、白菜とかさ、まるごと入ってんの。一人でこんな食えないっていうね」

「患者さん……え、先生のご実家って、歯医者ですか?」


そういえば今まで、鮎川先生の家の話は聞いたことがなかった。

私の質問に、鮎川先生は「あれ?」と箸を止める。


「言ってなかったっけ。そ、両親が開業医してるんだよね」

「そうだったんですね……確か、ご実家って、静岡でしたよね?」

「そう、静岡の沼津ってとこ。知ってる?」

「何となくですけど、はい」


伊豆半島は熱海くらいしか行ったことないけど、確か沼津はその反対側の方だった気がする。

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