無慈悲な部長に甘く求愛されてます

 片手で腰をつかまれ、身動きができない。

 爽やかで、それでいてほんの少し甘い匂いが、玄関に立ち込めるようだった。

 冴島さんの香水か、あるいは彼自身が発する色気のようなものなのかもしれない。

 ちゅっと首筋に吸い付く音が響く。

 唇の感触と、艶かしいリップ音にめまいを起こしそうだ。

 断る……なんて。

 自分がこの状況に流されているのか、それとも自ら先の展開を望んでいるのか。

 よくわからなかった。

 わかるのは、冴島さんに触られた場所が熱くなっているということだけ。

「おい、本当に」

 私を見下ろした彼が、顔色を変えた。凛々しい眉を歪めて、苦しげにつぶやく。

「なんで、そんな顔してるんだ」

 頬をつかまれたと思ったら、唇に柔らかな感触が触れた。

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