無慈悲な部長に甘く求愛されてます


 カップルしかいない周囲の客席をちらりと見て、彼女はつまらなそうにつぶやく。

「クリスマスイヴに激混み必至のレストランを半年前から予約して、私たちが一席確保したせいで予約が取れなかったカップルを想像してほくそえみながら女ふたりでディナーする。なんてこの悪しき習慣も、今年で四年目だっけ?入社以来続けてるよね」

「え、そんな意図があったの?私は普通に楽しんでディナーしてたよ」

「和花(わか)は仕事から離れると、とってもぼんやりさんよね……」

 私と真凛は同期入社だ。

 経営管理部と法務部で配属先は別れたけれど、採用人数が少なかったことと同期のなかで女子は私たちふたりだけということもあって、必然的に仲良くなった。

 シャンパングラスをあっというまに空にして、真凛は自嘲気味に笑う。

「同僚のほとんどが男なのに、こんなに恋愛に発展しないなんて、入社したときに想像できた?」

「私はともかく、真凛はいくらでも彼氏ができそうなのにね」

「見た目で寄ってくる男なんて、信用できないけどね」

「……そうやってガードが堅いからじゃない?」
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