無慈悲な部長に甘く求愛されてます

 私のバカ。業務に支障が出るから、仕事中は考えないようにしているのに。

 給湯室でお茶を淹れ、レンジでお弁当を温めながらため息をついた。

 私の勘違いじゃなければ、あの日、私たちは確かにいい雰囲気になった。

 あのとき邪魔が入らなかったら、私は部長と……。

「って、ばかばか」

 忘れようしたそばから思い浮かべてしまうなんて、本当にどうしようもない。

 こんなふうに、あの日以来、私は気を抜くと冴島部長のことばかり考えてしまう。

 でも彼のほうは以前と変わらず、会社では不機嫌オーラを漂わせている。ごくたまに、私しか見ていないときに柔らかい表情をすることはあるけれど……。

 冴島さんは、私のことをいったいどう思っているのだろう。

 好意は持ってくれているような気がするけれど……。

「さすがに、好き……とかじゃないよね」

「好きだよ」

 びっくりして振り返ると、営業の池崎さんが立っていた。

「俺は小松ちゃんのこと好きだよ。弁当をつくってくれたらもっと好きだな」

 手に持つビニール袋を見て、私は苦笑する。

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