好きって言えよ、バカ。
「本当に素敵な人に好きになってもらったんだね、絃は」
「うんっ、そうだねっ……」
「そろそろさ、気づいたんじゃないの?自分の気持ち」
優しく微笑んで、そう問いかけてくる瞳。
それは、何のこと?
わからなくて、私は首を傾げる。
「とぼけないの。絃が好きになった人よ」
「す、好きになった人っ!?」
あまりにも突然過ぎて、思わず大きな声を出してしまう。
ハッとしてキョロキョロと周りを見てみたけど、少し遅めに下校していたからか、ほとんど人はいなかった。
「もう本当は気づいてるはずよ?」
胸に手を当てて聞いてみなさい!と言われて、言われるがまま胸に手を当ててみる。
私が好きなのは……?
私が……1番好きになったのは。
頭の中に浮かんだのは、やっぱりたった一人。
あの人の顔だった。